GINの話から

行きつけのお店の主人からすごく美味しいジンを見つけたと聞いて、「やっぱり夏はジンがいいですね」と答えたのだが、なんで俺はそんなことを言うんだろうと改めて考えて思い至ったのは、矢沢永吉の「時間よ止まれ」だった。記憶のなかの歌詞は、こんなふう。

 

汗をかいたグラスの冷えたジンより

光る肌の香りが俺を酔わせる

思い出になる恋と西風が笑うけれど

このひとにかける

 

いいねぇ。

この曲は、不思議な曲だ。たしか、資生堂のCMにあわせてシングルが先行発売され、その後アルバム『ゴールド・ラッシュ』に収められたと記憶しているけど、アルバムのどの曲と比べても、それ以前以後の彼のほかのどの曲と比べても、この曲は声が違う。まったく力みがなく、シャウトもなく、淡々と歌っているんだけど、少し鼻にかかった声に甘さとほのかな苦味と透明感があって、まさに汗をかいたグラスの冷えたジンのような声だ。バックのミュージシャンもすごい面々。アレンジも素晴らしい。しかし、何にもまして、この声。

ただし、これはオリジナルのスタジオ録音だけの魅力で、矢沢さんのライブは生や映画やテレビでこれまで数々見てきたけれど、このクールな感じはライブでは再現できていないと思う。スタジオ盤は、ヴォーカルを加工しているんだろうか?風邪気味だったのか?

クルマの中でかけるといつも家族のブーングが起きるので別のCDに変えるのだが(うぅ涙)、私は何百回も聴いてきたから分かる。この曲は、唯一無比である。日本のロック史において。YAZAWA史において。

では、お聴きください。矢沢永吉さんで、「時間よ止まれ」。