2012第36節対湘南ベルマーレ

アウェイでの流儀として、
対戦相手であるホームクラブを担当するメディアが圧倒的に多い
記者席では、喜怒哀楽をなるべく表に出さずに、
取材をしています。
ゴールや勝利など、歓喜の瞬間でさえも、気づかれないように、
小さく拳を握りしめる程度に。
しかし、この時ばかりは、無理でした。
後半アディショナルタイム、
39番FW北嶋秀朗選手の2試合連続となる決勝ゴール。
あまりにも劇的なシーンに、
隣で試合を観ていた、日頃からお世話になっている
サッカー中継関係者の方に、
抱きつかんばかりに、両肩を叩き、
「○○さん!○○さん!やりましたよ!やりました!」
と叫びました。
その方も
「キタジが決めた!キタジが決めた!」
と興奮を隠し切れませんでした。
バックスタンドに陣取るファンやサポーターと
勝利後恒例となったダンス「カモン!ロッソ」、
その表情を撮影しようと、
小型カメラを持って、いち早くピッチに到着した私にまで
「ザキヤマさん!ザキヤマさん!!」
と声をかけてくれた方々―。
最高に熱い。
今シーズン、
町田、栃木、千葉、横浜FC、草津、東京ヴェルディ、水戸、
さらに加えるならば、松本…。
関東地方、または関東方面でのアウェイゲームでは
未勝利、無得点という不名誉な記録にも、
ついに終止符が打たれました。
関東のサポーター団体代表の彼の目からは熱いものが。
北嶋選手は
「いやー、世界で一番難しいゴールでしたねー」
という第一声、
屈託のない笑顔で続けました。
「(15番DF市村篤司選手の)シュートを「入れ!」と思わずに
『俺のところにこぼれてこい!』と思ったことが、FWとしては、よかった」。
では、その歓喜の決勝ゴールに至る過程を、
少し冷静になって読み解いていきたいと思います。
試合前の取材で、高木琢也監督は
「湘南も必死だと思う。正直、それ以上に(ロアッソが)必死になるのは難しい。
なぜならば、湘南は、昇格もかかっている。
アウェイで連敗して、(今シーズン)1回しか負けていない
得意のホームに帰ってきての試合だから。
でも、要所要所で、いいカバーリングやサポートができれば、
勝負になる」
と話していました。
前半43分、湘南GKからのロングボールを
4番DF廣井友信選手がヘディングで跳ね返し、
そのセカンドボールを17番FW齊藤和樹選手がおさめ、
相手DF2人との競り合いを制して、シュートまで持ち込み、
貴重な先制ゴール。
ベンチで笑顔を見せた高木監督は
「シュートまで持って行けたという過程が大事。
シュートまで持っていければ、自ずと得点は増える」
と成長著しい齊藤選手を評価しました。
その後、後半30分、湘南15番FW岩上祐三選手にPKを決められて同点に。
ここからの指揮官の采配は、
まず、後半40分、得点を決めた齊藤選手に代えて
19番MF五領淳樹選手を投入。
そのまま前線に配置しました。
これまでの試合から
北嶋選手に代えて五領選手という交代、
または、この試合サイドハーフでプレーしていた14番MF武富孝介選手を
FWの位置に1列上げ、サイドハーフに五領選手を置くということも、
十分考えられましたが、
高木監督は
「あの展開だと、
点で取れる、ピンポイントでゴールを奪えるのはキタジしかいない」
と北嶋選手をピッチに残し、
「淳樹には、押し込まれていたから、
『自分でボールを持って行ってくれ』と指示した。
保持できれば、味方の選手が、(攻撃参加のために)上がる時間ができる。
それを、高い位置をやってほしかった」
と五領選手を前線で起用したのです。
さらに、後半42分には、
11番MF藤本主税選手に代えて15番DF市村篤司選手をピッチに。
ポジションは、最終ラインのサイドバックではなく、中盤のサイドハーフ。
「細かいパスより、前が空いたら、出ていく、仕掛けていけ」
と高木監督。
「『大胆に仕事をやれ』ということで
勝負してシュートを打つことしか考えてなかった。
チームに何かしらの勢いをもたらしたかった」
と市村選手。
次々と、攻撃的なカードを切っていく指揮官。
「アウェイで2位湘南に引き分けなら…」ではなく
「勝ちに行く」采配でした。
そして、後半のアディショナルタイムは4分台。
その4分が近づきつつあった、そのとき―。
左サイドから武富選手がクロスを入れ
湘南GKがキャッチ、アンダーハンドでボランチに預けます。
背後から迫る五領選手、
171cm、63kgの小兵が181cm、76kgの相手選手に
ハードなボディコンタクトを仕掛け、ボールを奪うと、
奪ったボールを右45°で市村選手が受け、
ドリブルで湘南MFの股を抜き、シュート。
シュートはわずかに相手DFに当たり、バーを叩きます。
そこに、いたのが北嶋選手でした。
ゴールネットを揺らすヘディングシュート。
ロアッソの後半のシュートは、アディショナルタイムまでなく、
市村選手と北嶋選手の2本だけでした。
あの大事な局面で、勝ったロアッソの選手たちが
とんでもなく大きな勝利を手にしました。
しらす丼.jpg
写真は湘南ベルマーレスタジアムグルメから「しらす丼」ですicon:face_chomp
山崎雄樹