2013第41節対横浜FC

1対0で敗れたゲームのなかで、またまた涙を禁じ得ない場面に出会いました。
背番号39FW北嶋秀朗選手にとって、現役選手生活最後のホームゲーム。
北嶋選手は、サブで出番を待ちます。
「キタジに勝利を、キタジにゴールを」
という思いを胸に
選手たちは、背番号39と「この瞬間をMAXに!」という言葉が縫い込まれた
リストバンドを着けて、プレーしました。
選手たちが懸命に戦うなか、アクシンデントを襲います。
前半35分、キャプテン22番DF吉井孝輔選手が、
相手ロングボールに対応したときに、左足太ももの裏を痛め、ピッチの外へ。
「後ろの選手(DF)で交代枠を使いたくなかったのと、
キタジさんと、ピッチに立てるのが、きょうのゲームと次のゲームだけなので
1試合でもキタジさんと一緒にプレーがしたかったという気持ちが強くて
無理してでもいきかった」
と、一度は戦列に復帰。
しかし、その後のプレーでパスをさばいたときに、
「これ以上やってもチームに迷惑をかけるだけ」
と判断、自ら両腕で×印を作り、チームスタッフに合図を送り、
担架に乗って、ピッチを離れました。
中継画面に映し出された吉井選手の苦悶と無念の表情。
「悔しい気持ちしかなかった。あんな形でピッチを離れることがつらかったし、
キタジさんとプレーすることができなくなってしまった」
とリストバンドを腕から外し、額から目にかけて、顔の中央に二度当てました。
ハーフタイムに控室で
「キタジさんとプレーしたかった」と北嶋選手に伝えた吉井選手、
後半4分、30番FW仲間隼斗選手との交代に出番が来た北嶋選手は
「魂は受け取ったからと思ってグラウンドに向かった」と語りました。
自らの引退セレモニーのあいさつでも
「キタジさんとやりたいからと言って、
絶対に戻ってこられるような怪我じゃなかったのに
無理やり戻ってきて、プレーしようとした孝輔…ありがとうございます」
と気遣いました。
そして、試合後のインタビューでは
「自分の発している熱が多くの人に伝わればいいと思って、熊本に来ましたけど、
なかなかその伝わり具合、浸透度は、速くはないなと思っていた。
でも、そうやって1人、2人と浸透してきている人がいたという事実が、嬉しかった。
これから、ロアッソにそういったものを残していってくれたら嬉しいなと思う」
と語りました。
前節、アビスパ福岡との「バトルオブ九州」、1対0とリードされた終盤、
相手選手との激しい接触で倒れ込んだ吉井選手のもとに、前線から駆け寄り
「時間がないから頑張って立ってくれ」と伝えた北嶋選手、
その言葉をきいて、必死に立ち上がった吉井選手。
また、後半アディショナルタイムでの同点ゴール後、
転がるボールを拾い上げ、一目散にセンターサークルに戻り、
キックオフに備えたのも北嶋選手でした。
去年6月、ロアッソでの加入会見で
「勝つことに慣れること、勝つための振る舞いを伝えたい」
と話していた北嶋選手。
「魂を削り続けた」男が教えてくれたこと、伝えてくれたこと、
そして、残してくれることは、こういったことなのだと、
今、しみじみ思います。
山崎雄樹