2014年11月14日 我等音楽マサイ族

バッハ作曲: カンタータ29番「神よ、我ら汝に感謝す」より
第1曲「シンフォニア」/ウォルター(現・ウェンディ)・カーロス

実用的なシンセサイザーの草分け的存在と言えば、やはり
アメリカのロバート・モーグ博士が開発し、1964年に発表
された「モーグ・シンセサイザー」でしょう。これが登場すると
様々なアーティストがその全く新しい、既存の楽器とは完全に
異なる音色を、曲の中に実験的に採り入れ始めたのですが、
そんな状況の中、楽器としてのシンセサイザーの魅力と
可能性を世界的に知らしめることとなったレコードが68年に
リリースされました。それが、ウォルター・カーロスのアルバム
「スイッチト・オン・バッハ」です。タイトルが示す通り、バッハの
楽曲をモーグ・シンセサイザーで演奏したものなのですが、
実はこれ、まことに大変な労力の末に完成された作品なのです。
現在のシンセのように、ボタンひとつで音色を切り替え、鍵盤に
触れれば和音が奏でられる…という簡単便利なものではなく、
当時のアナログシンセはモジュラーのつまみをひとつひとつ
回しながら欲しい音色を一から作り、しかも単音でしか演奏
することが出来ないというシロモノでした。ですから、それを
知らずにこの「スイッチト・オン・バッハ」を聴けば、今の感覚で
言えば「ありふれた電子音楽」と思うかも知れませんが、まず
音色を作り、そして単音で演奏し、それを地道に多重録音して
作り上げていく…というのは、実に気の遠くなる作業なのです。
この「未来のサウンドで奏でられるバッハ」は大反響を呼び、
ミリオンセラーを記録しています。ちなみにウォルター・カーロス
はのちに女性となり、名前もウェンディとしました。現在では、
全てのアルバムはウェンディの名で再リリースされています。

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