福居万里子です。
1月13日(土)に放送したRKK70周年報道特別番組『 スローなニュース 』、いかがでしたか。
テーマのひとつが『 災害報道 』でした。
長崎県島原市の雲仙普賢岳です。
特別番組の収録後、ふるさと・長崎に帰省することがあり、雲仙岳災害記念館を数年ぶりに訪れました。
1991年の噴火災害では、死者40人・行方不明者3人をだしました。
その中には報道関係者や火山学者、地元の警察官や消防団員、タクシー運転手などが含まれます。
ご存知の方も多いと思いますが、当時のメディアをめぐっては “ 報道の過熱 ” や “ 危機意識の不足 ” が指摘されています。
火砕流に巻き込まれて亡くなったカメラマンが撮影した映像を上映するブースには、来館者の感想を書き込むノートがあり、こんな言葉がつづられていました。
『 当時 父は消防団で、私は不安でした。この映像を見ても腹立たしい気持ちしか沸きません 』
『 犠牲者をだしてまで、やる必要ありますか 』
『 報道関係は傲慢ですね 』
現在、地震や水害、台風に伴う中継や取材においては、どのメディアも安全第一、被災地とそこで暮らす人たちに迷惑をかけないよう配慮している・・・はずです。
それでも “ この取材は本当に、誰かのためになっているのか? ” と、ノートに書かれた言葉が自分自身に突き刺さるような思いがしました。
それから、特番の収録は年末だったので、北陸の地震が発生したのは、その数日後のことでした。
発生直後から私は各局の緊急報道から目が離せなくなり、とにかくいろんなことを考えました。
大津波警報がでているなか、どんな言葉で、どんな口調で、どんな声色・声量・速さで警戒を呼びかけるのが適切なのか。
実際に津波が押し寄せていて避難を続けている人たちは、ふるさとが火に包まれる映像をどんな気持ちで見ているのか。
道路の復旧が追いつかず “ 今はまだ、個人のボランティアは控えて ” と異例の呼びかけがされるなか、自分に何ができるのか。
「 複数のメディアから何度も同じことを聞かれ、そのたびに自分が責められているような気持ちになり辛かった 」
「 “ かわいそう ” で終わらせず、次につながる取材・放送を 」
熊本地震で目の前で家族を亡くした遺族が、発生から8年が経とうとする今、改めて取材を受けてくださったときの言葉です。
こうした言葉を、私たちは決して忘れることなく、今後の取材・放送にいかします。
ですから、逆に みなさんにも『 “ かわいそう ” で終わらせないで 』という言葉を胸に、
いま報じられている北陸の現状を見てほしいと思うのです。
『 報道 』というのは、私たち放送局だけでは成り立ちません。
ニュースを見てくださり、ときに取材対象となる みなさんがいてこその『 報道 』です。
速報性、手軽さが喜ばれる “ ファスト ” な時代ですが、
ときに立ち止まり、時間をかけてでも深く考える “ スロー ” なニュースを、みなさんといっしょに紡いでいけたらと考えています。
~ おまけ ~
雲仙岳災害記念館にあるカフェ『 GEO CAFE( ジオカフェ ) 』の看板メニュー『 雲仙火山トルコライス 』です。
黒米ご飯は「平成新山」を、地元産の野菜を使ったサラダは「妙見カルデラ」を、雲仙の豚肉を使ったトンカツは「溶岩ドーム・眉山」を表現しているとか。
島原で暮らすの人たちにとって、雲仙岳は恐ろしい火山であると同時に、恵みをもたらす火山であり、“ 誇り ” でも あるのです。
恐ろしい経験をしても なお、この地を離れず、火山とともに生きていく。
そのためには、やはり『 必要以上に恐れない、だからといって、油断もしない 』
ふるさと・長崎が、大切なことを、改めて教えてくれました。