月別アーカイブ: 2014年10月

2014年10月31日 我等音楽マサイ族

フェリックス・スラットキン指揮、ハリウッド・ボウル交響楽団
/グロフェ(作曲): ミシシッピー組曲より「マルディ・グラ」
[作曲:1926年、録音:1956年]

「芸術の秋」ということで、今朝はクラシックの音源をご用意
したのですが、このジャンルとしては新しい、1926年の作品。
「ミシシッピー組曲」という、全4曲からなるオーケストラの
ための組曲です。演奏時間は全編通して13分程度であり、
比較的コンパクトな小品。「音の旅(A Tone Journey)」と
いう副題が付いており、ミシシッピー川流域の風景や自然、
またそれらにまつわる歴史や逸話などを音楽で表現したという
実に壮大でドラマティック、そして映像的で美しい音楽となって
いまして、とても分かりやすく敷居の低い作品と言えるでしょう。
これを作曲したファーディ・グロフェはアメリカ生まれの音楽家で、
この作品の他にも「ハリウッド組曲」「ナイアガラ大瀑布組曲」
「デス・ヴァレー組曲」など、アメリカ各地の名所を題材にした
作品を数多く手掛けています。特に「グランド・キャニオン組曲」は
広く知られており、日本では音楽の教科書でも採り上げられて
いますので、耳にしたことのある方もきっと多いと思います。
ジョージ・ガーシュウィンの代表作「ラプソディ・イン・ブルー」、
そのオーケストラ版の編曲もグロフェの偉大な仕事のひとつで、
これらのようなシンフォニック・ジャズやセミ・クラシックの分野で
数々の功績を残している、親しみやすい音楽家なのです。

2014年10月24日 我等音楽マサイ族

Oh! SUSHI (「スシ食いねェ! 」英語バージョン)/シブがき隊 [1986年]

ヒット曲の外国語バージョンが制作される…ということは、
かねてより世界中でよく行われていました。その理由は
ほとんどの場合、アーティストの人気を本国だけに留める
のではなく、外国語で歌うことで他言語圏のファンを更に
獲得するためであり、また諸外国の既存ファンに向けた
サービスという面もある、マーケティングの一手法でした。
その意味から言っても、作られるべき外国語バージョンは
オリジナルの雰囲気を壊さない、あるいはアーティストの
イメージに沿ったものが完成されてしかるべきでありましょう。
しかし中にはそういった「外国への進出」が目的ではない
「外国語バージョン」が制作されることがあります。それは、
いわゆる「別バージョン」「スペシャルバージョン」のような
意味合いで作られる場合です。そういう例のひとつとして、
シブがき隊がシングルで発表した「Oh! SUSHI」という曲が
挙げられます。これは彼らが86年2月にリリースしてヒットした
「スシ食いねェ!」の英語版で、オリジナルの2ヶ月後、86年
4月に発売されました。そもそも「スシ食いねェ!」自体がとても
コミカルでノベルティ性の高い楽曲でしたので、その続編と
いうような趣で、あれこれの歌詞を英語にして遊んでみました…
と、これもひとつのファンサービスというわけでありました。

2014年10月17日 我等音楽マサイ族

Soul Bossa Nova/Quincy Jones [1962年]

クインシー・ジョーンズはアメリカを代表する音楽家。
今や一般的には超大物プロデューサーという認識ですが、
当初はビッグバンドのトランペット奏者としてキャリアを
スタートさせています。1950年代の初めのことです。
そこでアレンジャーとしての才能を開花させ、次第に
様々な作品に関わりヒットを生むようになっていきます。
81年の「愛のコリーダ」のヒットや、マイケル・ジャクソン
をプロデュースして大成功を収めるなど数々の桁外れの
快挙を成し遂げてきたクインシー・ジョーンズですが、
今日ご用意した「ソウル・ボサ・ノヴァ」は、60年代に
入って彼がプロデューサーとして活動し始めた時期に
発表された、初期の代表曲としてよく知られています。
ボサ・ノヴァは50年代にアントニオ・カルロス・ジョビン、
ジョアン・ジルベルト、ヴィニシウス・ジ・モライスといった
面々が中心となって生み出されたと言われています。
伝統的なサンバを、都会的で洗練させたサウンドに
磨き上げたボサ・ノヴァは、59年の映画「黒いオルフェ」
の音楽として使用され、世界的に広まっていきました。
その新しいサウンド「ボサ・ノヴァ」を、ビッグバンドアレンジ
でクインシー風に料理したのが「ソウル・ボサ・ノヴァ」です。

2014年10月10日 我等音楽マサイ族

Children/Robert Miles [1996年]

今日はこのコーナーとしては比較的新しく作られた、1996年の
曲をご用意しました。そうは言っても18年前の作品でございます。
ヨーロッパ出身のミュージシャン、ロバート・マイルズは、ハウス・
テクノと呼ばれるジャンルで活躍する作曲家、プロデューサーです。
そもそもハウス・ミュージックというのは、既存のソウルミュージック
のレコードの音にリズムマシンのビートを乗せ、ダンス・ミュージック
として作り上げていくという、ミックスの手法のことを指していました。
やがてそれは電子楽器を大きくフィーチャーしたダンスミュージック
全般を指すようになっています。このようなエレクトロニック・ダンス・
ミュージックのジャンルは流行していく過程で様々に細分化しており、
テクノ、アシッド・ハウス、トランス等々、現在では際限なくジャンル
分けされていて、愛好家でも混乱しているであろうという現状です。
ロバート・マイルズの「Children」も、そういったジャンルの役目、
クラブで踊ることを前提として作られた曲なのですが、そんな中で
彼は強調されたビートの上にも印象的なピアノの音を盛り込むなど、
音楽そのものをいかに美しく響かせるか…という点にこだわっています。
ハウス・テクノの特徴である「四つ打ち」(1小節に4回オン・ビートで
バスドラムを踏むリズム)と、きらめくメロディとの対比が聴きどころです。

2014年10月3日 我等音楽マサイ族

風吹く丘で/青山ミチ [1966年]

今日ご用意しましたのは、1966(昭和41)年にシングル盤で
リリースされました、青山ミチの「風吹く丘で」という曲です。
青山ミチは1962年にポリドールからデビューしたシンガー
で、パンチの効いたソウルフルな歌声に定評がありました。
ノリのよい楽曲で大いに魅力が活かされるタイプの彼女が
ポリドール時代最後の作品としてリリースしたのが、この
「風吹く丘で」です。橋本淳作詞、すぎやまこういち作曲の
この作品において、彼女は実に美しく、しっとりと、たおやかに
詞とメロディーを歌い上げており、その余裕たっぷりの表現も
相まって、彼女の歌唱力の高さにあらためて気付かされます。
レコード会社の移籍に伴い、このシングルは発売後すぐに
回収されてしまったため、一度は人々の耳に届く機会が閉ざ
されてしまったのですが、それから2年後の1968年、今度はGSの
ヴィレッジ・シンガーズの5枚目のシングル曲として復活したのです。
新しいカバーバージョンは、歌詞やメロディーはそのままですが
タイトルのみ変更となり、「風吹く丘で」から「亜麻色の髪の乙女」
に曲名が改められ、今度は見事にヒットするに至ったのでした。
というわけで、今朝は青山ミチのオリジナルでお聴き頂きました。