第94回全国高校野球選手権熊本大会は
9日目が終わりました。
きょうまでにベスト16がほとんど決まり、残りはあと1チームです。
きょう、藤崎台県営野球場で行われた
第3試合 牛深 対 熊本工業は1点を争う好ゲームとなり
延長戦の末、4対3で熊本工業がベスト16進出を決めました。
試合に勝ったのは熊本工業ですが、一方で、
追い詰められていたのも熊本工業でした。
9回表まで終わったところで、
先攻めの牛深が3対2でリード。
熊本工業は9回裏に1点を返して同点とし、
10回裏に1点を加えてサヨナラ勝利を収めました。
ゲームセットとなったとき、一塁側の牛深高校応援席は一瞬沈黙。
しかし、次の瞬間には、大きな拍手と「よくやったぞ」という言葉が選手たちに贈られました。
部員17人の牛深野球部。
スタンドで声援を送ったのは保護者の方々や吹奏楽部が中心でした。
保護者の皆さんは、「親も子どもも一体となって戦う」を合言葉に、
応援グッズを手作りして試合に臨んでいらっしゃいました。
また、吹奏学部は、今月30日にコンクールを控えた中で、
初戦から球場に駆けつけていました。
部長の樫谷杏菜さんは
「正直、大変な部分もあるけど、
野球部が頑張ってきたことを知っているから、精一杯応援したい」と話し、
試合終了後には、目に涙を浮かべながら
「次も応援したかった。悔しい。
でも、パワーをもらいました。コンクールに向けて頑張ります」と力強く語ってくれました。
この試合、10回を1人で投げぬいた牛深のエース中村忠義投手は、
「9回表の先頭打者(代打)に、追い込んでから打たれたことに悔いが残る」と
悔やしさを滲ませましたが、
試合終了後に捕手から「ナイスピッチング」と声をかけられ、
「滅多にそんなことは言われないからとても嬉しかった」とも話していました。
その声をかけた捕手とは、中村忠義投手の双子の兄の中村俊貴投手です。
双子の二人は、小学2年生で野球を始め、
中学2年のころから本格的にバッテリーを組むようになりました。
兄の俊貴捕手は「野球のときだけは仲良し」と笑い、
弟の忠義投手は、「配球に関しては思い通りの球を要求してくる」と
双子ならではの意思疎通があることを明かしてくれました。
また、俊貴捕手は
「双子で野球が出来て最高に楽しかったです。
熊本工業とここまでの試合が出来て悔いもない。ベストの試合だったと思います」と
忠義投手は
「二人でたくさんケンカもしたけど、最後には息が合って、
熊本工業をここまで追い詰めることができた。今までありがとう。ご苦労様と言いたい」と
それぞれに話しました。
さらに、忠義投手は
「きょうの試合は、これから出会う友達や、
将来の自分の子どもに自慢できる試合になりました」と胸を張りました。
ところで、この双子の中村兄弟と、
前述の吹奏楽部の部長の樫谷さんは
いとこ同士なんだそうです。
試合後、中村兄弟は、スタンドからの応援に感謝しながら、
コンクールを控えた吹奏楽部やいとこに
「今度は吹奏楽部が悔いのないように頑張る番」
「僕たちの試合で元気を与えられていれば嬉しい」とエールを送りました。
選手たちが精一杯のプレーをし、
その姿に精一杯の声援を送る。
一見すると、
応援している側と応援されている側に分けることができ
応援している方がパワーを送っているように思いがちですが、
実は、どちらも互いにパワーを送り、パワーをもらっているのですね。