第94回全国高校野球選手権熊本大会は、
3日連続での順延のあと、
きのう、4日ぶりに試合が行われました。
きのう、藤崎台県営野球場の第一試合では、
氷川高校が2シードの熊本工業と対戦しました。
氷川高校は、学校の統合により今年が最後の夏の大会となります。
部員は9人。ぎりぎりの人数で、伝統の熊本工業に挑みました。
試合は、熊本工業が13対0(五回コールド)で勝利。
氷川高校野球部は、38年の歴史に幕を下ろしました。
スタンドの応援は、保護者の方々が中心でしたが、
その中に、一際大きな声で応援している男性の姿がありました。
野球部OB(7期生)の、Hさんとおっしゃる方です。
太鼓などがない中、メガホンひとつだけで
打席に入った選手に歌の応援を送り、
守備では、ひとつひとつのプレーに声をかけていらしゃいました。
息子さんの少年野球の応援を参考にされたそうです。
最後の夏を戦っている後輩たちに
「この日のことを大切に心に刻んで、これからの人生を歩んでいってほしい。
私自身、野球部の仲間と出会えたことが氷川高校野球部での一番の思い出。
会う機会は減ってきたが、当時の仲間がどこそこで頑張っているという話を
時に耳にしながら、私自身も毎日を頑張れている」と
メッセージを送ります。
その、Hさんの思いが届いていたのか、試合後、
氷川高校の選手たちに話を聞くと、
「家族みたいなチームでした」
「これから先の生きる力を与えてくれたチームです」といった言葉が返ってきました。
そして、Hさんは、最後に、
「将来、選手たちが今日の試合を振り返ったときに、
”どこかのおじさんが太か声で応援しよらしたね”と思い出してもらえればありがたいですね」と
優しい笑みを浮かべながらおっしゃいました。
その思いも含めて、氷川高校野球部の最後の夏を戦った9人の選手たちは、
きのうの熊本工業との一戦を、深く心に刻んだはずです。
きのうの県営八代野球場の第3試合では、
豪雨の被害を受けた阿蘇中央高校が八代工業と対戦し、
8対3で勝利。3回戦進出を決めました。
豪雨で部員にケガなどはなかったものの、
部室やグラウンドは大きな被害を受け、
豪雨となって以降、交通が寸断されたりしている影響もあって
1年生から3年生までの部員全員が揃った日はまだないといいます。
きのうも、ベンチ入りメンバーは何とか全員球場に来られましたが、
阿蘇に残り、片付けや地域の復旧作業に当たった部員もいるとのことでした。
選手たちは、豪雨で犠牲になられた方々に黙祷をして
きのうの試合に臨みました。
そして、試合の前には
「試合をする以上は、絶対に負けられない。
勝って、阿蘇の方々に少しでも元気を届けよう」と
そんな話をしたそうです。
試合中は、甘い球を逃さない打撃、
また守備では、際どい打球への反応、素早いカバーリングなど、
選手たちの集中力は素晴らしいものがありました。
豪雨で練習ができておらず、終盤で足がつったと話す選手もいましたが、
集中力が最後まで切れることはありませんでした。
試合のあと、選手たちは
「今日勝てて、阿蘇の方々にも喜んでもらえるのではないか。
元気を与えられるように、勇気を届けられるように、
それだけを考えてこれからの試合に臨みたい」と話していました。
今大会の選手宣誓は次の通りでした。
「子どものころからの夢である甲子園を目指して、
感謝、感動、元気、勇気を届けられる大会にすることを誓います。」
水俣高校の大園栄作主将がチームメートと共に考えたこの言葉が、
期せずして、宣誓文という以上に、大きな大きな意味を持ち始めた気がしています。