私ことまさいよしなりが今週お持ちしたのはこちらです。
モーツァルト: 歌劇『魔笛』より「夜の女王のアリア」
/フローレンス・フォスター・ジェンキンス(ソプラノ) [1938年]
いよいよ夏本番を迎え、お子さんたちはさっそく夏休みを
満喫していることと思います。そこでこのコーナーでも、
夏休みらしくのびのびとした、自由で何者にも囚われない
オンリーワンの表現を成し得たレコードをご用意しました。
それは、往年のアメリカのソプラノ歌手、フローレンス・
フォスター・ジェンキンスが1938年に残したSP音源です。
この人は1868年生まれ。44歳にして初めてリサイタルを
開き、その独創的で誰にも真似のできない歌唱スタイルで
当時のクラシック界や多くの聴衆に圧倒的なショックを与え、
アメリカで彼女を知らない者はいないという程の認知度を
得ていました。また、若い才能の育成のために基金を設立
するなど音楽への惜しみない情熱を持っていた彼女は、
周りを陽気にさせる持ち前の天真爛漫な性格もあって
たくさんの熱心なファンを獲得し、最晩年の1944年における
カーネギー・ホールでのライブに至るまで高い人気を誇って
いた、今や伝説のソプラノ歌手なのです。彼女は誰にも
負けない音楽に対する愛情と、自分の歌への信念、そして
音楽で周りを幸せにするという心からの願いを持っていた、
素晴らしい歌手でした。そんな彼女に足りなかったものは
たったふたつ、音程の正しさとリズム感だけだったのです。